WONDER BOY 小章174スーツを着た小人のスケーターの話アンダーライン
僕が帰りにいつも寄る小さなスケートパークにいる小さな男の話、小さな男は9人いてその1人のスーツを着たスケーターの話をすると、彼はいつも一人でいることがほとんど、極まれに、仲間と思われるスケーター達と4人くらいで話しているのをみた、男は坊主で顔はグレーの印象である、声は高く、ぶかぶかでだぼだぼのスーツをいつも着ていた、スーツの小人の男はいつも黒いゴミ袋を手に持っていてそのなかにはゴミがはいっていた(たぶん)、僕はちょうどこの前その男がコーラを飲みながらランプの上にひとりで座っているのを見つけたので、思い切って近くに寄って話しかけてみた、「こんにちは」スーツの小人の男は何も言わず、じっと僕をみて「ひゃっはっは」と急に高い声で笑い出した、まだ小人の男はじっと僕を見つめる、「だいじょうぶ、あの羊飼いはちゃんと追えるよ」といった、僕は意味もわからず「はい」と言った、小人の男は立ち上がり、ランプを小さく、軽く、速く、降りていった、ランプに描かれたグラフィティのアンダーラインは小人の男の後を追うように動きだし、飛び出してきた、男が滑るスケートのラインとアンダーライン、線はとてもとても美しかった、プールの縁のライン、ウィールのライン、木のライン、電線、スニーカーの靴ひものライン、割れそうなデッキのライン、セクションのライン、BMXのライン、傷のライン、小人の男はいつもバーガーキングのワッパーを食べていて、首を左右に倒しては、首の骨をポキポキと鳴らした、指先は地面をなぞり、その先には変な虫がいた、真夜中に見た夢の話を聞いたとき、おなかが捩れるほど笑った、視線の先の雲は、もくもくとソフトクリームで、耳の延長上には、不気味なモンスターの鳴き声がした、バンズのスニーカーはたのしく、鼻歌は恐ろしいメロディーだった、小人の男は、ある日、スーツのポケットに手を突っ込み、何かを探した、ごそごそと探す、見つけた手のひらに、乗せられていたのは、一粒のキャンディー、ああ!また、あのときと同じように僕がキャンディーをもらえたんだ、よかった!と僕はおもった、ただ、それだけの、話。
leave a comment