WONDER BOY 第3章 リルとスカートの男の出会い、ソフトクリームの匂いとシルバースター前編
あたしは学校の帰りのスクールバスが、退屈な小麦畑をまっすぐに進んでいる時に、途中のダストボックスのところであの男を見つけた、きっとあのアレを探しているのだろうと、すぐにわかった、スカートの男は、ダストボックスをあさりアレを探しているにちがいない!と、「惜しいいわね、残念だけどその中じゃないのに、、」後ろを向いてあたしはスカートの男を窓越しに見ながら小さい声で言った、スクールバスが停留所に着くと、いつもここで降りないボットがあたしとおなじところでバスを降りた、「あれ?ここじゃないでしょ?もうひとつ先じゃない?」とあたしが言うと「いいんだ、きょうはちょっとおばさんのところにようがあるんだよ」とボットはなんだか落ち着きのないようにそわそわと言った、「ふーん」あたしはさっさと家に帰りたくてその場から走って帰った、はじめの曲がり角を曲がると、なんとなくボットが気になり、大きい道に戻って停留所を見た、ボットは勢いよく走ってどこかへ消えてしまった、あたしはなんとなくだけど彼の行き先が気になるような気がしたけれど、そのまま家に向かった、家の前に大きな水たまりができていて覗き込むと、青い空と白い雲とあたしの顔が映っていた、「イヤなそばかすね!」あたしはあたしの顔を足でビシャンと踏んづけて家の重い扉を開けて家に入った、鞄を放り出してリビングの大きなベージュのソファに座った、座った弾みで弟のミニカーが床に落ちた、家にはだれもいなくて静かに微かにどこかで時計の音がしている、窓から見える黒い古い郵便ポストを見てあたしはスカートの男を思い出していた、毎朝6時、スカートの男はうちの黒いポストの中に黒い手帳を入れて行った、夜8時になると今度はあたしがその手帳をうちのポストに入れて置く、そしてつぎの朝、また必ずスカートの男は手帳を持ってきた、それは1週間くらい続いていた、けれど、3日前から男は来ない、スカートの男との出会いは1週間とちょっと前のグレーの曇り空の日、あたしは白いTシャツに黒いミニスカートを履いてグレーのタイツを履いていた、家の前の通りをソフトクリームを食べながら歩いているとき、前からスカートを履いた男が現れたのだ、白い大きなだらしないTシャツに黒い長いスカートを履いて、濃いグレーの靴下を履いていた、あたしとスカートの男は眼が合った、「なに?」「・・・・・・」スカートの男は何もしゃべらずにあたしに黒い手帳を差し出した、「なによ、、あなただれよ」ソフトクリームが急に溶けて手に冷たい甘い感触が流れてきた、「毎朝、君の家のポストにこの手帳を入れて置くから読んでみて」「はぁ?何を言っているの?」あたしは無視してスカートの男の横を通り過ぎとき、チューリップのようなとてもいい匂いがした、グレーの曇り空のこの日のこのとき、あたしはなんだかその匂いを嗅いで小さくキラキラ銀色に輝く星の瞬間を見た、ふりかえって男を見ると、まだこちらに向けて手帳を差し出していた、薄汚れた黒い手帳である、あたしは香りに誘われるようにその手帳に手をかけてしまった、でもその瞬間スカートの男は手帳をすっと引っ込めて「、、毎朝6時にこの手帳を入れて置くから、、、」そう言って、まっすぐに歩いて行った、あたしは眉間に皺を寄せながらいまの不可思議な感じに違和感を思いながらソフトクリームを食べてみた、鼻に甘いソフトクリームのミルクの匂いと、チューリップの匂いを嗅いで (変なの) と思ってスカートの男を見送った、、
leave a comment