WONDER BOY

WONDER BOY 第2章 ボーダー模様の角兎を抱くのは剥製の魔女

Posted in Uncategorized by dikdiklyly on 01/30/2011



このまえの雨がとても降って、雷が40回は鳴ったあの午後、大きなグレーの塊が空から去って、青く白い空になったとき、僕は急いで学校から飛びでてスクールバスに乗りこんだ、濃いグレーのバスは森を抜けて、小麦の畑をまっすぐにすすんでいる、その途中にある街のバスの停留所に、スカートを履いた変な男がいた、その男は停留場のとなりにある落書きだらけの大きなダストボックスを漁っていた、もう雨は止んでいるのにまだ木の柄の透明の傘を差していた、僕はバスの大きなサイドミラー越しに、男の姿を見ていた、男が諦めて去るとき何かが落ちたのを見忘れなかった、(何をおとしたのだろう….)僕はここ辺りでいちばん近いリルが降ろしてもらったところで一緒にバス降りた、「あれ?ここじゃないでしょ?もうひとつ先じゃない?」「いいんだ、きょうはちょっとおばさんのところにようがあるんだよ」「ふーん」リルはふたつの結んだ長い髪を揺らし、走って家まで帰っていった、(あんなに走ったらそばかすが道に落ちそう) 僕はリルが見えなくなるといそいで、おばさんの家へいっていとこの黒いBMXを借りた、「あの子が帰って来たらきっとでかけるだろうからそれまでには戻ってきてね」「はい、学校に忘れ物をとったらすぐ帰ってきます、おばさんありがとう」「いいのよ、気をつけてね、もう雨は降らないと思うけど…」僕はおばさんに手を振ると急いであの停留所に向かった、雨が降った後でいとこのBMXは道路の水たまりの滴をどんどん背中に当ててきた(リュックが泥だらけだ…これじゃあの大きい自転車を借りればよかった)僕は小麦畑の一本道を猛スピードでこいだ、小麦畑の景色が横目でライオンのようになって通り過ぎていくように見えた、停留所に着くとあたりは静かでちょうどむこうからクリーム色の街のバスがやってきた、僕はBMXを地面に放り出し、さっきのスカートの男が落とし物を探した、ダストボックスの下に半分だけ隠れて、黒いカバーの手帳が落ちていた、僕はバスがくる前にその手帳を拾ってポケットに捩じ込んだ、白いバスはその停留所では停まらずそのまま通り過ぎた、バスを見送ると、僕はベンチに座り、ポケットから手帳を取りだした、手帳は雨に濡れた地面のせいで片方のカバーが湿っていた、紙にも少し雨が染み込んで破れそうだった、僕はとてもドキドキしてワクワクして不思議な気分でページを捲った、(あの男はだれなんだろう、この街じゃみたことない男だったな)『ボーダーの模様の角兎を抱くのは剥製の魔女 ここは魔女の世界、魔女の国である、魔女は誰しも一匹の角のはえた兎”角兎”と生活をしているのだ、西の魔女は、どこへ行くにもほうきではなく高級車を乗り回しガールフレンドのもとへ行った、北の魔女はキャンディーが酷く好きで、マシュマロを焼いたのを食べるようになってからは真夜中にそればかりを食べてどんどんと太り、とうとう家から出ることができなくなった、アイスランドの魔女は木でつくった家を持ち引っ越す時には毎回その家を燃やした、大きな炎を見て、魔女はつぎに造る木の家のことを想像した、金星の魔女はとても美しく、着ているドレスや高いヒールの靴はいつも新しくピカピカで眼を奪われるほど美しかったが、パンツは名前入りの白い前に小さいピンクのリボンがついた、幼い少女のころから履いている物をつかっていた、本の魔女は大きな黒い角兎と暮らしていて、その角兎には”ブックマーク”という愛称をつけて、1メートルを越す大きな本を読む時には決まって、この角兎を栞代わりに使っていた、東の魔女は死んだ、夜の魔女は、シチューとパンが大好きで、それにあわせていつもコーラを飲んでいた、空気の魔女は、ほうきに乗って空を飛ぶのがとてもじょうずで、風の魔女ともとても仲がよかった、ふたりはいつもいっしょに大きな街の時計台に行き、そのてっぺんでシャンパンを飲むのが好きだった、カワルガワルの魔女は、いつも絵を描きそれを街の至る所に貼っていた、だれかに剥がされても剥がされても、そのうえから新しいドローイングを貼り続けた、夢の魔女は、昼間眠り、陽が沈んでから太陽が昇るまでずっと起きていて人々の眠る夢を祈った、黒の魔女は、いつも椅子に座りだれかを待っていた、黒い大きな眼はいつも一点を見つめ、とても寂しそうだが微笑んでいるようにも見えた、足元にはいつもボーダー模様の角兎がいて、寄り添うように眠っていた』僕は、いっきに書いてある文章を読んだ、それ以降のページは白紙で濡れていて、ページを開くのも困難だった、(なんなんだろう、これはあの男が書いた作り話なのかな..) 僕は独り、停留所にいるのがとてもこわくなって手帳を捨てるか迷ったけれど、またポケットにしまい、BMXに乗っておばさんの家を目指した、あたりは段々と暗くなり、BMXのスピードに合わせて後ろから夜がやってきた、おばさんがちょうど家に入るところが見えた「おばさん!」おばさんは僕の方を向いて、安心をした顔をして笑った、僕はおばさんの前でBMXを停めると「おばさんおそくなってごめんなさい」「だいじょうぶよ、でも遅そいから心配しちゃったわ」「BMX…遅くなちゃった..怒ってた?」「平気よ、あの子はスケボーででかけたからきっとガールフレンドのところね」「ならよかった、ありがとうございました」「お茶でも飲んでく?」(….はやく帰らないとママに怒られるかな..)「ママにはさっき電話しておいたわよ、学校に忘れ物取りに行ったて」「じゃあ、ちょっとだけお邪魔します」「どーぞ」僕はおばさんのお家の大きな王様みたいなソファに座って、壁にかかってるいろいろな絵画や写真を見ていた、どれも美術館にあるみたいな額に入れられていて、僕はおばさんの家にきてこれらを見るのが好きだった、大きな躯の黒い角のはえた大男が牛を引いていて、その前にはきりんのように首の長い黒い毛の生き物が小さい男を乗っけて歩いている絵がいちばんのお気に入りだった、僕はあたたかいレモネードを飲んで、自分の家へと帰った、手帳はもう一度捨てるか悩んだのだけど、やっぱり捨てずに僕の部屋の机の引き出しにしまった、それから何日も経ち、僕はすっかりスカートの男の事も、黒い手帳の事も忘れていた、不思議な魔女の話は、たまに夢にみたけれど、朝にはその夢の記憶も消えかけていた、あるお天気雨が降った次の日、ママが変なことを口にして僕はとても驚いた「ねえ、隣町で変な男の死体があったそうよ、恐いわね、なにか事件じゃないといいけど、その男の人、スカートを履いていたらしいわよ」「え..」僕は急にあの日の出来事を思い出した、「スカートを履いた男..?」「そう…最近ね、そんな噂を聞いてたんだけれど、亡くなったんですって、ほら、おばんさんちというかリルちゃんのおうちの近くって聞いたわよ」僕は自分の部屋にかけていき、引き出しからあの手帳を取りだした、手帳はあの時のように湿ってなく、ぱりぱりに乾燥していた、僕は手帳を握りしめて、家を飛び出し自転車に乗った、「どこいくの?!もう夕飯の時間よ!」ママの声を後ろに僕はとても急いだ、すっかり夜が来た、真っ黒くたまに小さい灯りがある中を自転車に乗って、僕はリルの家の近くまで来ると、スカートの男の家を探した(とても息が切れて苦しい)白やレモンいろの壁の家が建ち並ぶ住宅街にひとつだけ、光がついていない白い家をみつけた、僕はたぶんここだろうとなんだかわかったんだ、バルコニーには木の椅子があり、風ですこし揺れていた、薄暗い家に近づき、僕は息をのんで、窓から中を見てみた、まだ人が住んでいるような気配がする、空間にとても僕が好きなテーブルや椅子や本棚があるのが、薄らと見えた、僕は家中を窓から見渡して、奥の低い棚の上でなにか小さく青白く光っているものがあった、次の瞬間、眼を信じられなくなった、そこには猫ぐらいの大きさの角のはえた兎がいた、いたというより、剥製だった、黒と白のボーダーの剥製、僕は手帳を握りしめた、薄暗い家の中、家具の黒い形が薄ら見える中、ひと際不思議な角兎の剥製(あれは本物なの)奇妙な剥製に僕はとてもとてもこわくなった、僕は手帳を、バルコニーの椅子の上に置いて、自転車に乗って一目散でその場を後にした、あの日、スクールバスから見かけた、スカートの男の姿が鮮明に甦る眼の中、僕は、手帳を置いた時に、すこしだけ、触れた椅子に、ふんわりとあたたかさを感じ、甘い匂いを嗅いだ、僕は夜を切る様に、自転車をこいで家に帰った、眼はいろいろなものを見つけ出しながら。

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