WONDER BOY

WONDER BOY 第1章 スカートの男

Posted in Uncategorized by dikdiklyly on 01/26/2011



僕が知っている、あのスカートを履いた男は、白い家に住んでいて、王様のような椅子があった、小さいテーブルにはコーラが散乱していた、ある日、男は偽物のライフルのような銃を振りまわしていた、ある昼、男は庭にバスタブを出し、湯につかり本を読んで泣いていた、バスタブには”HATE IT!”とスプレーで描かれている、ある3日前の夜、男は新しいスカートで屋根に登り、ピザを食べながら大きな声で歌っていた、1週間前の明け方、男は紐につないだアヒルをつれて、バス停で、ただバスを待っていた、バスが来てもそれには乗らず、ただバスを待って、昼すぎにはどこかへ消えた、9日前の夕暮れ時に、男はトマトにたくさんの顔を描き、それを家の前の道路に並べて車が通るのを待っていた、11日前の真夜中、男は、ベッドルームで花火をしていた、窓からゴールドやシルバーの花火が、キラキラチクチクと輝いているのがとても美しかった、なぜ、布に火がつかないのかとても不思議だった、男はとてもやさしい眼でその光をみつめていた、14日前の雨の日、男は3メートルくらいある大きな黒い傘で、マシュマロを食べながらあるいていた、男は食べながらマシュマロをいくつも落とすので、雨で濃い灰色に濡れた地面にはマシュマロの線ができていた、19日前の晴れた日曜日、男は、黒いハイヒールをはいてMcDonaldsへいった、抱えきれないほどのハンバーガーを買ってきて、それをぜんぶ食べきるのに3日かかった、21日前の街ですこし大きな地震があった夜、男は、慌てて外へ出た、そのときはスカートではなくバレリーナのような格好をしていた、とても美しかった、足は右足にはクリーム色のコンバースで、左足は白色のコンバースだった、24日前のとても寒い朝がやってきたの5時に、その男はいのるようにショッピングカートのなかに座っていた、腕のなかにはグレーの兎がいた、28日前の真っ黒な夜に、男は大きな月をうしろにトランクひとつで引っ越してきた、白いスカートをひらひらとさせて、踊るように歩いていた、眼がとても充血していて、真っ暗闇に光っていた、一昨日の昼間、おとこはサンドイッチ食べながら、庭にある木でできた揺れる椅子に座り、陽をたっぷり浴びて”On the Beautiful Blue Danube”を聴いていた、サンドイッチをもちながらくるくると廻り、スカートは大きく円を描いた、きのうのお天気雨の午後、空は青いのに、なぜかたくさんの雨が降っていた、陽の光に浴びた雨の粒が金色に輝いて、キラキラと美しかった、陽と雨の匂いが漂う、木々の葉が雨の滴をはじき、スローモーションの様にひとつひとつ輝いていて、僕の家の小さい窓から見える、外の世界はとてもとても美しかった、そんな日に、隣のスカートの男は死んだ、庭の椅子に座って眠るように死んでいた、黒いサングラスをかけ、小さい本と黒い石を持ち、引っ越してきた時と同じスカートを履いていた、椅子がまだすこしだけ揺れている、2階のこの窓から見える、四角い世界は、陽と雨の滴で透明の金色にいつまでもいつまでも、輝いた、その中でスカートの男はいつの間にか死んでいたのだ、僕は、下におりていき、お天気雨の中、男の前までいった、男の肌はとても白く細かった、雨に濡れあたりは甘いクッキーのような匂いがした、甘くて冷たくてあたたかいここで、僕はなんだかとても泣きたくなった、小さい黒い虫が、男の指の上を歩いている。

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